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新海誠は、なぜ評価されるのか?

2016年8月に新海誠監督作品君の名は。」が上映される。

君の名は。」は、日本を代表するアニメーション監督である新海誠の最新作である。彼の経歴を振り返ると、自主制作でアニメを作り始め、それが評価されさまざまな作品を手がけ、今に至っている。代表作は、「秒速5センチメートル」「雲のむこう、約束の場所」「言の葉の庭」などがあげられる。

 

 


「君の名は。」予告

 

新海誠の魅力とは?

新海誠作品の魅力は、「見たことのある風景、雰囲気」だと思っている。登場する小物(例えばガラケースマホ、制服、テレビなど)や背景の緻密さによって、物語を自分ゴトとして捉える事ができる。簡単に言えば、ものすごくリアルなのだ。

 

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例えば、上記のシーンを見てみると、話の中で必要なのはスマートフォンの画面の通話履歴だけである。この時点ですでに細かいのだが、さらに、その奥にはリモコン、雑誌もぼかす形で表現されている。異常にリアルな世界がそこに描かれているのである。

しかし、この場面に共感できるのは今、僕らが2016年を、正確に言えば2000年くらいから2016年までを生きているからこそ共感できる場面だとも言える。このスマホ画面内の通話履歴という画面は、ガラケーとあまり変わらないデザインであり、スマホの中のガラケーらしさだと僕は思っている。つまり、昔ガラケーを使い、スマホに買い換えた経験から、スマホの中にガラケー的な要素を見出すことが出来るということである。

そういった意味での普段感じているノスタルジーなどを含めて、全て、「あ、これどこかで見たことあるな」という気になるのである。このきっと誰しもが一度は見たことのあるような気がすることこそが新海誠の魅力であり、力なのだ。

 

世界観を共感できない外国人に人気の理由

ここまで新海誠の持つ時代を切り取る力を観点に見てきた。では、もしこれが未来、例えば2100年に見た時につまらなく感じるのか?という視点から考えてみよう。

新海誠作品は海外でも高い人気を誇っている。現に「言の葉の庭」などはさまざまな海外の賞を受賞している。

 

言の葉の庭 Memories of Cinema

言の葉の庭 Memories of Cinema

 

 

ただ、ここに先程述べた時代性に対する共感という観点はない。先の場面で言えば、このリモコンとスマホと雑誌という組み合わせは恐らく日本人は共感できるが、海外の人は共感できない。それはライフスタイルや文化圏、さらにはインテリアなどそもそもの世界観が違うからである。

しかし、ここにこそ新海誠作品の魅力があると考えている。つまり、海外の彼ら彼女らはこの映画を日本の生活の風景として、つまりフィクションとして捉えている。言ってしまえば、僕らが「SEX AND THE CITY」や「フルハウス」をみるようなつもりなのである。新海誠監督作品は、日本的なものが登場する。例えば、「言の葉の庭」では万葉集を扱い、「秒速5センチメートル」では田舎の単線、「ほしのこえ」では種子島宇宙センターが登場する。それは歌舞伎や相撲のようにあからさまな日本文化、COOL JAPANではないが、確かに日本的なものである。もっとおしとやかな日本的なものである。

話が散らかってきたが、つまり、ここで言いたいのは、日本人と外国人の間に新海誠作品の見え方が異なっているという話である。もちろん大前提として話が良いということは日本でも海外でも共通項としてあるだろう。ただ、世界観の捉え方という面においては異なる。まとめると、

 

日本人→どこかで見たことのある風景の中で進む物語に共感する

外国人→日本的なものを疑似体験することでフィクションとして楽しむ

 

 という評価構造になると考えられる。

 

まとめ

 ここまで新海誠作品の魅力に考えてきた。ここで最後に最新作「君の名は。」について少し考えてみたい。ただ、この作品は公開前であり内容についての考察を行うことはできないことは容赦いただきたい。

タイトルである「君の名は。」。このポイントは「。」である。

句点(。のこと)は基本的に文章の終わりにつける。ここまで書いてきた文章の中にも幾つもの句点が存在する。その代表格は、「バッハの旋律を夜に聴いたせいです。(サカナクション)」や、グループ名では「モーニング娘。」などもある。

 「君の名は。」は続きがありそうでないということを示唆しているのではないだろうか。つまり「君の名は~」のように続きがあるのではなく、そこで強制的に中断させられているようなイメージを表現したのではないかと思う。だからこそ、このタイトルは「君の名は」ではなく、「君の名は。」なのだ。終わりがある。ちなみに、英語のタイトルにも、"youe name."とピリオドがつけられていることからも、この句点がいかに重要な要素であるかが伺える。

 

ここまで長く書いてきたが、なにはともあれ「君の名は。」を楽しみにしているいちファンとしては早く8月末日になることを祈るばかりである。

 

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