なぜ、ツアーファイナルは東京でなくなったのか
ワンマンライブのファイナルといえば東京だった。
ワンマンライブに限らず、多くのサーキット形式のライブイベントのトリが東京だった。例えば、スペースシャワーTVが毎年行っている列伝ツアーでは、これから売れそうな若手バンドを青田買いして、一緒にツアーを回る。その過程で成長していき、第円団を東京で迎えるというストーリーがある。
けれども、最近、ワンマンライブのファイナル公演が東京でなくなってきた。
例えば、クリープハイプ。2012年のツアー「つま先はその先へ」のファイナルは赤坂BLITZであった。だが、2016年のツアー「たぶんちょうど、そんな感じ」ではファイナルはなんばHatchである。また、今度開催されるツアーの最終は仙台PITである。
この他にも多くのバンドが、東京でツアーファイナルを迎えなくなってきた。それはなぜか?
まだ、音楽のために上京してるの?
音楽のために上京する、と言い残して田舎を出るバンドマンが多くいた。東京は情報が多く集まり、刺激を受けやすい場所だったからだ。
数十年前までは、ドラムの演奏方法やスタジオの使い方さえも地元の先輩や兄弟からしか教わる方法がなかった。だから、音楽は生まれ持った家系や環境に左右される特権的なものだった。
けれども、それがYoutubeなどの動画サイトにより大きく変わる。
Youtubeやニコニコ動画の弾いてみた、によって人が演奏している様を見るコストが格段に下がった。つまりかつてのようによい先輩に恵まれたバンドはうまくいき、そうでないバンドはうまくいかない、環境に左右される時代は終焉を迎えた。
だからこそ、今、東京に上京する必要はなくなった。そして、Youtubeはバンドが地方の小さなコミュニティーで王様でいることを許さないようになった。その結果、バンドの演奏レベルは格段に底上げされた。
ご当地ゆるキャラみたいなバンド
東京へあこがれを持つ必要性がなくなってきていることを先ほどまで見てきた。
今のバンドのトレンドは、ご当地ゆるキャラのように地方を背負って活動するご当地バンドだ。「西宮のキュウソネコカミです」「八王子のグッドモーニングアメリカです」「北浦和のテレフォンズです」などなど、あげればキリがない。
このきっかけは東日本大震災だ。あの震災をきっかけに、地元のコミュニティーや身近な人を大切にする気持ちをいやというほど認識させられた。「絆」というフレーズはその年の流行語にもなった。
だから、仙台出身であることを大きく売りだして復興のために活動を行うケースが増えた。それを境にして、地方を背負って活動するバンドが増えたのだ。この流れはバンドにかぎらずマイルドヤンキーなどが増加していることからも言える。
なぜ、ツアーファイナルは東京でなくなったのか?
ここまで、東京へあこがれを持つ必要性がなくなり、地方を背負うバンドが増えていた流れを見てきた。では、なぜツアーファイナルを東京で行わなくなってきたのか?それは二つある。
一つは、東京の価値の低下により東京のツアーファイナルにこだわらなくて良くなったから。
二つ目は、自身の活動の拠点である地方都市でツアーファイナルを行うことで、地元に根ざしたバンドであるというアイデンティティーを得ることができるからである。
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