Netflix『アメリカを荒らす者たち』からみる「アメリカを荒らす者」の正体
Netflixドキュメント『アメリカを荒らすものたち』ハノーバー高校落書き事件簿。
シーズン2が配信されて数週間立つ。ここでは改めてシーズン1の魅力とその真相を考えてみる。
1.あらすじ
このドキュメンタリーは、ハノーバー高校で教員の車に行われた落書きの犯人を探す物語である。主人公は放送部の青年。容疑者として大した証拠もないのに退学となった生徒の無実を証明するために真実を追い求めていく。
真実を追い求める中で様々な事実が明るみになり、それがまた事件を引き起こしていく。
男女の交友関係、両親との確執、友情、そんな青春映画では軽いスパイスになりえる要素がここでは人の人生を左右しかねない大きな出来事へと発展していく。
2.『アメリカを荒らす者たち』とは誰なのか?
誰が犯人か?という推理ゲームはもちろん楽しいが、ここではタイトルに注目して話をすすめたい。
『アメリカを荒らすものたち』原題はAmerican Vandal。ハノーバー高校という地方の高校を舞台にして繰り広げられる話なのに、なぜ『アメリカを荒らすものたち』なのか?
今、最もアメリカを荒らしていると言われるのはドナルド・トランプである。彼は、フェイクニュースという単語を広めた一人でもある。
また、同じような言葉で「オルタナティブ・ファクト」という単語もある。
これは、トランプ大統領の就任式がオバマ大統領の就任式に比べて来場者数が多かったとする発言に対して、航空写真から判断するに明らかな誤りにもかかわらず、大統領顧問が養護するために「もう一つの真実である」(Alternative facts)と発言したことに由来している。
話を『アメリカを荒らすものたち』に戻すと、この話の中で主人公ピーターはドキュメンタリーを取る中で繰り返し、「真実を知りたい」と発言する。
終盤に差し掛かるに連れて、何が真実かわからなくなり、そして、真実が人を傷つける場面も目の当たりにする。つまり、この話では、真実は常に見る側や受け取る側の都合の良いように改変されることを描いている。「真実はいつもひとつ」そういう世界にはなかなかならない。
「アメリカを荒らす者」。その正体は犯罪者でも落書き犯でもなく、一つの真実を頑なに信じ込んで他人を避難したりする者たちのことではないだろうか?
同じテーマを扱った作品に森達也監督の「FAKE」がある。これは佐村河内氏の盗作疑惑に関するドキュメントであり、世の中から明らかに疑いの目を向けられた佐村河内氏に対する救いと追求の話である。こちらも未見の方はぜひ御覧ください。