アベンジャーズじゃない、新たなスーパーヒーロー映画とは?
2016年は映画が話題になることが多かった。「君の名は」や「シン・ゴジラ」がその2大巨塔であろう。ただ、興行収入を見ると圧倒的に「君の名は。」ブームである。未だに映画館が満席になっている。君の名は。とシン・ゴジラについては過去に書いたので、それ以外でヒットした2016年公開映画について書く。
今回は、19世紀のアメリカ開拓時代を舞台としたレオナルド・ディカプリオ主演「レヴェナント:蘇りしもの」について、ネタバレなしで、今の大統領選挙も踏まえ書いていく。
とにかく死なない映画
この映画を1言で説明するなら、レオナルド・ディカプリオがとにかく死なない映画だ。
熊に襲われ、先住民に狙われ、吹雪におそわれ、裏切り者におそわれ、でも死なない。スーパーマンやバッドマン、スパイダーマンよりも圧倒的に過酷な状況でも死なない。笑ってしまうくらい強い人物として描かれている。
このレオ様の強さを印象づけているのは、圧倒的な映像と音楽だ。
まず、映像は、ライトをほぼ使わず、自然光の下で撮影されている。だからこそ、もちろん夜のシーンなどは暗くて見えづらい。しかし、そのシーンがあるからこそ、朝焼けはより鮮やかに映るし、吹雪での雪の白さは圧倒的な色味を出すのだ。
また、坂本龍一が手がけた音楽も主人公が陥った状況の残酷さを強めている。自然の生の音を邪魔しない音楽であり、風景からインスピレーションを受けて制作されたかのような完璧な音楽がさらに映画を彩っている。
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悲劇のスター レオナルド・ディカプリオは、ヒーローになるのか?
主演のレオナルド・ディカプリオは、言うまでもなくアメリカのムービースターである。しかし、タイタニックでアカデミー賞を取れず、本作で受賞するまで5度も逃している悲劇のスターでもある。
そんなムービースターを本作では、圧倒的敗北感のある世界へと突き落とした。それにより、彼をヒーローに昇華させることが出来た。彼だからこそ、悲劇がより悲劇的に見えるし、一度やられることでカウンター的な強さを強調することができる。
また、この作品の監督は「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」という作品も手がけており、こちらでもアカデミー賞を受賞している。こちらの作品は、昔、バードマンというスーパーヒーローを演じた落ち目の俳優にまつわる物語である。
これも考えると、本作は、アベンジャーズのようにヒーロー同士が決してつるまない、あたらしいスーパーヒーロー映画であるといえる。
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「レヴェナント;蘇りしもの」とトランプ支持者
アメリカはかつて、スーパーマンやスパイダーマンのような完全なる正義の味方を欲していた。しかし、ベトナム戦争やイラク戦争などを経て本当に悪い人はいるのか?という疑問が国内では生まれてきた。
その結果、オバマという、ブッシュに比べるとヒーローっぽくない民衆よりの大統領が生まれたのだろう。
このレヴェナントという作品は、レオナルド・ディカプリオという誰しもが知っている俳優の悲劇の境遇と物語をリンクさせ、何にも屈しない強いスーパーヒーローを再びアメリカに戻そうという作品ではないだろうか?
だからこそ、この映画は、今の大統領選挙におけるトランプ支持を予期させるような流れに似ているのでは?と思う。
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Lineスタンプはアートになれるか
最近、アートで町おこしとしてアートフェスティバルが多く行われている。
有名なのは瀬戸内国際芸術祭や大地の芸術祭。都心部で言えば、六本木アートナイトなどもこれにあたる。
けれども、アートというとなんだか敷居が高いイメージがある。今回は、少しだけアートとはなんだろうと考えていきたい。
うさまるはアート?
うさまるをご存知だろうか?よくLINEスタンプで目にする機会の多くなったうさぎというかなんというかゆるいキャラクターだ。
このうさまるはラインのスタンプとして知名度をあげた。 ラインのスタンプは、言葉を打たなくても気持ちを伝えることができる非言語のコミュニケーションツールだ。まず、このうさまるスタンプが人々のLINEでのコミュニケーションを助けていることは間違いない。
ただ、うさまるはスタンプに収まらず、いろいろな商品化やアニメ化などがなされた。そこで、コミュニケーションツールであったうさまるのラインスタンプは、今やうさまるというキャラクターが独立して商品になるまでに成長してきた。つまり、「道具」に人々が愛着を 持った結果、キャラクターに命が宿ったとも解釈できる。
では、うさまるはアートなのか?
例えば、うさまる現象をアートとして捉えて注釈をつけるなら、「非言語でのコミュニケーションツールであった絵が道具としてではなく、キャラクターとして認識されてきた。これによって日本人の世界観を浮き彫り出す存在になった。」と書かくことができるかもしれない。
ただ、自分でこんなタイトルを付けてあれだが、アートというくくりで考えるのはもはや意味が無いと思っている。その話を次はする。
アート=美術館に飾って額縁に入ってる?
アートと必ずセットになるのはそれを展示する美術館だ。趣味は美術館巡りなんて言うと、いかにも物静かでインテリな人というような印象を受ける。
けれども、美術館に展示されるだけがアートではない。例えば、Chim↑Pomというアーティストがいる。彼らは今、新宿歌舞伎町の取り壊しが決まっているビルで個展を開いている。この展示会の一番の魅力はこの展示会がビルの取り壊しとともに破壊されることだ。ビルと運命をともにする展示会とも言われている。
この歌舞伎町振興組合ビルは、かつての歌舞伎町を支えてきた振興組合のビルであった。けれども、きたる東京オリンピックや外国人観光客の誘致のために、歌舞伎町浄化計画というのが活発になってきている。例えば、歌舞伎町の真ん中にあるTOHOシネマズは最たる例だ。
本展示会のテーマは以下のように書いてある。
展覧会のテーマは「Scrap and Build」。「2020年東京オリンピックまでに」をスローガンに再開発が進む、現在の東京という都市の姿に迫ります。
また明日も観てくれるかな? | 〜So see you again tomorrow, too? 〜より
スクラップしてまた建てることが良いことなのか?けれどもいつかはスクラップしないと建てられない。そういうめんどくさい関係性を表現しているのがこの展示会である。
こういう展示を含めた展示会を開く姿勢もアートであると思う。現にこのChim↑Pomはイギリスのアート誌で「アジア太平洋地域で最も影響力ある40歳以下の40人」に選ばれている。つまり、アートという言葉の持つ難しそうなイメージを失くすために、うさまるだってChim↑Pomだってアートなのだ。
だから、アートに対して今カジュアルに接することができるアートフェスティバルは良い機会なのかなと思っている。
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The Mirrazは本当にオワコンバンドなのか?
The Mirrazのベストアルバム「BEST!BEST!BEST!」とミニアルバム「そして、愛してるE.P.」が発売された。ただ、連日投稿される彼らのLINEBLOGには、「売れたいけど売れてない」という悲痛な現実が書かれている。Voの畠山は、以前から「売れたい」と発言している。本当にミイラズがオワコンバンドになってしまったのかについて考える。
攻撃的だけじゃないMirrazらしさ
世間が考えるThe Mirrazらしさとは、攻撃的な歌詞と言葉数の多さだ。例えば、「check it out! check it out! check it out! check it out!」では以下の言葉から始まる。
あー曲が生まれないって出来たのがこの曲
決してパクリじゃございません
そんな裏話はロッキンオンで言えばいいって?
そうです僕はただの泥棒です
シャムネコチシャネコ泥棒猫
もうなんとでもお気に召すままにお呼びくださいませ
オラを馬鹿にするのはかまいません
でもファミリーへの罵声は許しません
この歌詞を見ると攻撃的であり、権力に噛み付くような印象を受ける。ただ、その攻撃性は本質ではないと思う。
The Mirrazの歌詞は、畠山自身の個人的な内容が多い。それこそがMirrazらしさだと思っている。先のcheck it outの歌詞は、読むだけで「あぁ、この人ムカついてるんだな」という事がわかる。この分かりこそが共感につながる。
話は変わるが、ある番組の公開収録の中で星野源が「共感はいらない」という話をしていた。「共感なんてしてほしくて書いてもらってるわけじゃないし、むしろ勝手にリスナーが共感してるだけだ。だからこそ、そういう共感に寄った歌詞は書きたくない」という話だった。ちなみに、今の世間的な星野源のイメージは、彼がわざとポップなキャラクターを演じて収入を得るプロ童貞のような立ち振舞をしているから成り立つものであるが、そこについてはまた後日書きたいと思う。
話を戻すと、The Mirrazの魅力は「個人的なことをありのままに歌っていること」であると考える。
メジャーとか、インディーとか
バンドが売れてくると「ファンのために」と称して一般的なふわっとしたメッセージを言うバンドが多くなる。これがメジャー的なバンドとインディーズ的なバンドの違いだと思っている。これは、もはや陰謀論的に言われている「メジャーによる縛り」なのかもしれないがその辺は関係者でないので分からない。ここでミイラズのブログから引用すると、
ちなみにこの曲、最初の歌詞がメジャーからだとリリース出来ないって言われて変更しています。メジャーの歌詞の制限をかなり感じ始めました。まぁだいぶ攻めてたしね…。あと、歌詞が個人的すぎるからダメとかも言われたなぁ。うーん、ミイラズって個人的な歌詞が多いんだけどなーそれがなくなったらミイラズの意味ないんじゃ?と思いました。
The Mirraz 公式ブログ - ベストアルバム解説的な その2 - Powered by LINEより引用
個人的すぎるからダメというのは、ほぼミイラズの良さを去勢してしまっている事になっている。これにより、ミイラズはあまり個人的な歌詞を書くことができなくなり、なかなか良さを発揮することができなくなってきたのだ。その間に歌詞ではなく、音楽的アプローチを多く試みているが、リスナーは難しい音楽の話よりキャッチーなものに反応するため、なかなかこのアプローチはヒットには繋がらなかった。
ミイラズは今後どうなる?
そんな経緯を経て現在、ミイラズはメジャーから自主レーベルと言うかたちでインディーズ的な活動に戻った。そこで発表されたシングルがこれである。
本作は、ある意味今までのミイラズとは音楽性は異なる。が、歌詞はミイラズ特有の同じ言葉の繰り返しや個人的内容が戻ってきているような印象がある。だからこそ、音楽性は変化し続けても、本質的な魅力は失われていないと考える。
だから、声を大にして言いたいのは、「The Mirrazはオワコンバンドではない」ということだ。
3月のライオンはどこへ向かうのか?
以前、3月のライオンについてこんなことをこのブログに書いた。
羽海野チカは、ハチクロの「ボクとキミの閉じられた恋愛観」から、3月のライオンの集合として愛し愛されるような「擬似家族的なつながり」を描くようになったのだ。
疑似家族的なつながりを強調してきた3月のライオンは12巻で舵を大きく切った。これには賛否両論があったと本人もツイートしている。そこについて考えていく。
12巻の感想は両極端なものが多い。「濃い、読み応えがある」っていうものと「内容が全く無い、心に残らない」という感じ。あと「ご飯美味しそう」と「ご飯はもううざいよ」。「どんどん充実」と「どんどん劣化」。…後は両極端の意見から私が何を見つけるかだな。
— 羽海野チカ*9/29*12巻発売 (@CHICAUMINO) 2016年10月2日
12巻は3月のライオンの変化点
まず、結論から言えば、僕は今回の12巻は賛否両論の「賛」の側だ。
この物語の今までの中心は、主人公である桐山零の抱える闇の部分である。今までの3月のライオンは、読むのが辛くなるような内容がとても多かった。例えば、零くんがどこにも居場所がないことや、川本家の次女ひなたちゃんをとりまくいじめ問題などである。その闇を説明するための前半部を終え、どうこの零くんを救うかという問題に舵を切ったのが今回の12巻である。個々のキャラクターが幸せに向かって進んでいく。
つまり、今までは状況説明の前フリであり、12巻以降がこのマンガの核心であると考える。だからこそ、この漫画の持つダークな部分が本質だと思っていた読者は裏切られたと感じ、ハチクロを期待していた読者にはやっと希望が見えてきて一安心するという評価が生まれる。
幸せな桐山零はつまらないのか
では、そんなダークな部分が完全に漂白された、幸せでハッピーな物語が今後進むのか?そう簡単ではないと思う。
少しだけ話はズレるが、東日本大震災直後、絆という言葉をテレビやネット様々な媒体で目にすることが多くなった。それは、電気などのインフラが止まり一時的ではあるが不自由な生活を強いられたことにより、人の絆を改めて大切にしようという気持ちになった。人々はそんな不安を植え付けられ、意識的にも無意識的にも「人とのつながり」を気にせざるを得なくなった。
話を戻すと、3月のライオンでは、というか羽海野チカ作品の多くは、そんな人のつながりを中心に描いている。ただ、そこで人のつながりを肯定するだけではなく、「つながりすぎると気を使うし、逆につながらないのもさみしい。」というめんどくさい人間の気持ちを表現している。それを踏まえると、今後の3月のライオンも単に零くんや川本家が幸せになるシンプルなストーリーではなく、もっとめんどくさい話になるだろうと想像できる。
だからこそ、12巻に批判的であろうともこれからの3月のライオンを追うべきであるし、未読の人は是非まだ間に合うので読んでほしいと切に願う。
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勇者ヨシヒコの面白さってなんだ?
低予算のものこそ工夫がされていて、面白い。低予算で面白いものを作る、福田雄一監督作品の魅力を今回は考える。
勇者ヨシヒコに学ぶ低予算ヒットの方程式
福田監督といえばまず挙がるのが、勇者ヨシヒコシリーズだ。本作はドラクエのような世界観をダンボールの敵など小道具で撮影した完全低予算作品である。下記サイトに10月7日まで過去作品は無料配信しているので、見たことない方は見てほしい。最高ににくだらなくて面白い。(2017年2月現在は配信されていません)
では、普通の山の中でコスプレした人たちが演じている映像がなぜあんなにも面白いのか?それは、くだらないことを本気でやっているからである。ここで本作では低予算ということは感じさせないくらいの熱演を俳優が繰り広げている。低予算であると感じるのはそのセットや雰囲気が安く見えるからである。
つまり、福田監督作品の方程式とは、演技力のある役者×チープなセットである。このチープなセットこそが逆に余計なものを見せずに役者に集中させる力を持たせている。
『ニーチェ先生』から見る演技と素の境目
また、福田監督が手がけた作品として、『ニーチェ先生』という作品がある。これは先の勇者ヨシヒコシリーズと異なり、原作の漫画を実写化した作品である。福田監督は多くの原作作品の実写化も手がけており、例えば、変態仮面やアオイホノオ、また、来年は銀魂の公開も控えている。
話を戻すと、この『ニーチェ先生』はコンビニを舞台とした店員同士のコメディーである。そのため、コンビニの周りで起こることしか話には登場しない。つまり、実写化する際にも、コンビニのセットとその周りだけでことが済む。だからこそ、セットは低予算ですむが、舞台のようにシーン縛りがある難しさを持つ。
ここで役に立つのが、先の福田監督作品の方程式で登場した、演技力のある役者である。福田監督の演出としてよくあるのは、誰かがふざけてそれが余りにも本気すぎて、出演者が素で笑ってしまうというものだ。
例えば、本作では、コンビニの店長がノリノリで通路を歩き、それを冷ややかな目で他の店員が見るというだけのシーンでも、店長が本気で笑わせにかかるからみんな思わず役を忘れて笑ってしまう。通常ならNGになるシーンもここでは採用される。
この意図は、おそらくバラエティー番組でおなじみの笑い声のSEと同じであると考えられる。役者と演じているキャラクターがあいまいになることで、これはドラマであって演じているのだから笑っていいんだという承認のようなものを与える効果がある。つまり、本気でやる出演者を笑わせるくらい面白くなければ視聴者なんか笑わせられないし、その俳優が素で笑うことであぁ笑っていいのか、笑いどころなのかという承認を得たような気持ちになる効果を生み出している。
新作 勇者ヨシヒコから見る予算の使いみち
低予算監督と言われながらも知名度を上げ、そこそこ知名度が出てきた福田監督が編み出した手法というのは、低予算であることを魅せる手法だ。ただ、さまざまな作品を通して知名度を挙げた監督には予算が多くついてくることが考えられる。勇者ヨシヒコシリーズなんで三作目なのだからそれなりにあるだろう。だが、低予算監督としてのイメージがある福田監督はその予算をどこに使うのか今回の10月から放送開始する勇者ヨシヒコについて考えてみよう。
それはずばり、プロモーションである。本作のプロモーションにおいて、馬車を使った広告やヤフーの検索フォームなど多くの広告を打っている。
その中でも新宿アルタ前に実際の馬車を走らせるという広告はこのSNS時代において、フォトジェニックな対象を作り拡散させることに成功している。実際、勇者ヨシヒコを知らない人にとっても街中に馬車がいるというのは異様な光景である。だから写真に収めてTwitterに投稿する。それを見た勇者ヨシヒコ既存のファンは存在に気がつく。それによりさらに拡散される。その繰り返しにより、ネットニュースやまとめサイトに転載され、さらに宣伝される。
おそらくこの馬車を手配するのはかなりの額がかかっているだろうが、単にアーティストの音楽が大音量で流れるトラックを走らせるより何倍もの効果が予想される。低予算で面白いという手法は、費用対効果を格段に引き上げる広告制作でも工夫されている。
しかし、番組が始まる前の番宣の広告で多くの額を使ったことが予想されるため、ドラマ制作費自体は低予算で作ることを強制される。だからこそ、上手くシリーズものであっても以前のように追い詰められた状態で、クオリティーを保って作れるのである。ただ、まだ本放送が始まる前の段階での推測であるため、本当にそうなるかはわからない。けれども、こうなってほしいという期待を込めてこの記事を終わりにする。
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